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インタビュー

近距離起業のススメ ーパンをつくる先に伝えたいものー

今、見附で話題のお店といえば、こちらのPicto(ピクト)さん。

「女性オーナー」「フランス帰り」「オシャレな内装」とオープン前から、周囲がどこかワクワクとした高揚感に包まれていたのを思い出します。そんなお店のオープン直前、オーナーである宮島順子さんにインタビューさせていただきました。

(プロフィール)

宮島順子さん(30代・インタビュー当時)/長岡市栃尾地区出身/Picto(ピクト)オーナー

高校卒業後、横浜の専門学校にてパン作りを学び、京都のラミデュパンに就職。その後、フランスにわたり、さらに技術を磨く。特にフランスパンは、アルザスのコンクールで優勝したこともある腕前を持つ。2017年に帰国し、2018年3月お店をオープン。

―ここにいたるまでの経緯を、おしえていただけますか。

はい。私は生まれが栃尾(長岡市)なんですけど、高校から長岡に出て、横浜の専門学校に通いました。まあ、外へ出ていく人に良くあるパターンで(笑)。卒業後は、京都のパン屋さんに就職し、その後フランスにわたって現在に至ります。途中何度かビザの関係で帰国したりもしているんですが、だいたいそんなかんじです。なんでここに来たのかっていう話は、なぜ日本を離れたかにも繋がるんですが。

―なにか思うところがあったんでしょうか。

日本ってなんでも新しいものがもてはやされる空気があるじゃないですか。すぐ新しいものに飛びついて、ありがたがる。それにすごい違和感を持っていて。だって例えば食も文化の一つで、時代や人の営みの中で発展させていくものなのにほんとにそれで良いの?って思って。

―それで京都に行こうと?

いや、正直その頃はまだ若いし、自分が何を作りたいとか、定まっている感じはなくて、純粋にそこで働く人が好きで働いていたんです。ただ、自分で何かできるようになりたいって気持ちは、子どもの頃からずっとありました。

―そう思うようになったきっかけがあればおしえてください。

私の実家は農家で、とてもおだやかな子ども時代を過ごしました。3人兄妹の末っ子だったこともあって、いつも上からからかわれたりしていたんですが、正直、誰かから憧れられたいみたいな気持ちもあって…。自分でちゃんとできるもの、手に職が欲しいっていうのはずっと思っていました。それに、いつも自分で自分を認めたい気持ちがあったのかもしれません。そのために、自分を高めるために、手に職をつけたくて、色んな場所に行きました。フランスに行ったのも、その延長だったのかもしれません。でも体力が追い付かなくて、くじけたことは何回もあったし、口先だけで行動が伴わないみたいなこともありました。

―修行に行かれたフランスはどんな印象でしたか。

暮らしの面ではフランスはそんなに楽園とか、そういう風には思わなかったです。
むしろ理想とは程遠い環境で…。例えば物価は高いし、役所はお役所仕事だし。
自分がやりたいことがそこにあったから、そこに住んでいたっていうかんじだと思います。

 

帰国を決意させたもの

Picto(ピクト)がある新町商店街・平日の風景

―フランスから日本へ帰るときはどんな心境だったんでしょうか。

実際、日本へ帰るかどうかはすごく悩んでいました。
ただ「なぜ自分はフランスにいるのか。」「今得ている知識をだれのために使うのか。」と、突き詰めて考えたときに、やはり自分は家族のために学んだことを使いたいなと思って。

―まずは家族に向けて、自分が学んだことを生かそうと?

それが正直な気持ちだったんです。例えば、くじけそうな時とかも、美味しいクロワッサンを作ってお母さんに出したらきっと喜んでくれるだろうなと思うと、すごく気持ちが満たされたりするのに気づいて。だから、まずは家族に向けて、自分が学んだことを発信しようと思いました。とはいえ、毎日気持ちが折れないように、「お店をやるため私は日本に帰るんだ!」と自分に言い聞かせながら、フランスでは過ごしていました。

―日本に戻られたのはいつですか。

去年の春先です。それから準備を始めました。
お店をやろうと思って帰国したので、それ以外の選択肢はなかったです。
年齢的に早いとか遅いとかも関係なかったし、今始めたことが間違いとも思っていなくて。
きっと失敗するだろうし、悩むだろうし、でもそれも含めての残りある人生なので、別に長生きしたいとも思わないし、走り抜けて死にたいという気持ちでやってきました。

ちゅっと高めのショーケース。あえて子どもから見えにくい高さにすることで、大人になったときに見える景色を想像してほしいとの想いがある。

 ―出店場所は結構探されたんでしょうか。

ほんとに色々なところをみました。でもフランスでも思ったんですが、まちに自分が求めるものが全て揃っているなんて、まずないですよね。むしろそんなところがあったら不自然だと思います。私は、長岡の橋の向こうとかまで、色々探したんですが、正直親に「長岡に迎えに来て」とお願いすると「えーちょっと遠いなぁ」という反応をされるんです。やっぱりお店を開いても、親に来てもらえないんじゃ意味がないし、サポートもしてほしかったので、来てもらえる距離にお店を置きたいなと思ったんです。そんな時に、たまたま見つけたのが見附でした。

―実際どのくらいの距離ですか。

実家からは車で10分くらいです。あと、飲食店への卸も考えているので色んなところに納品するにも便利な場所だと思います。もちろん、交通量調査などもしましたけど、“ここでやろう”っていうのは既に心の中で決めていたので、もし交通量が少なかったとしても、来てもらえる魅力が自分や、このお店にあるのかどうか、それをすごい考えました。

 

これからについて

―どんなパンをつくっていきたいですか。

そのパンがそのパンらしくあるように、作りたいなと思っています。
固いほうが美味しいものは固く、例えば噛んでいるうちに感じる美味しさも伝えたいし、ただ固ければいいわけでもなく、ちょうどいい美味しい固さを目指したいです。

―お店の顔となるようなパンがあったら教えて下さい。

パンを日常の中に取り込めやすい形を考えたときに、やっぱりサンドイッチかなと思って、この店の看板商品にしました。

写真のようなイートインメニューも。特にエメンタールチーズとなかよしミートさんのももハムを挟んだサンドがおすすめとのこと。

価格は、どのパンも他の店舗に比べてちょっと高いかもしれません。もちろん安ければ良いものは良いんだろうけれど、なんでも安くすれば良いっていう風には、思っていないです。例えば、値段を安くして自分が材料を買うのにも苦労するみたいな続け方や、作りたいものはあるけれど、それは材料が高いから作れないみたいなことは、違うと思っていて…。そのバランスが難しいですけど、今後やっていく中で、この地域や人との関係性の中でまた変わっていくところかもしれません。

―どんなお店にしていきたいですか。イメージをお聞かせ下さい。

パンも食文化の一つでそれで全てが表現できるわけではないので、ここでパンを作り続けることは選択肢の一つであって、全てではないですよね。あくまで、文化を継承していく方法の一つだと思っています。だから、ここでの手段もパンかもしれないし、本かもしれないし、音楽かもしれないし、別にこだわっていないんです。ただ、ここでパンを作って強くまっすぐに伝えていくために、自分の技術も磨いていきたいし、今も100%完璧じゃないと思っています。そもそも100%完成することなんてないのかもしれません。

「Picto(ピクト)」という名前に込めた想い

ちょうどお店の看板をつけているところでした

―お店の由来はピクトグラムからきているそうですが、いわゆる空港とか駅にあるようなあれですよね?

そうです。ピクトグラムって、国も言葉も関係なく、時代を超えて誰もが見たら、それとわかるかたちなんですけど、よくよく考えたらすごいことだと思って。自分が作り出すものも、そんな想いが少しでも伝わっていくようなものになればいいなと思ってつけました。

※ピクトグラム(英語 pictogram)
何らかの情報や注意を示すために表示される視覚記号(サイン)の一つであり、言語に制約されず直感的に内容を伝達できる。

(ピクトグラムの例)

―ロゴも確かに一目でわかりますね。

はい、イメージを伝えてデザインしてもらいました。こういうデザインや内装もすべて新潟の人にお願いしたんですが、こんな色んな事が出来る人たちが新潟にいる、っていうのがほんとにすごいな、と思っています。

(実際のロゴマークはぜひお店に行って確かめてみてください。あぁ、なるほど!となります)

―色々な方にお世話になったんですね。

開業準備中も、理解あるパン屋さんとケーキ屋さんの元で勉強させてもらいました。ほんとに恵まれた環境だったと思います。

訪ねてきてくれた幼なじみの稲田さん。工事を見つめる背中に「攻メノBLACK」

こんな風に幼なじみが訪ねてきてくれるのもそうだし、自分でお店やろうって立ち上がって、
多くの人と出会ったり、協力してもらえたりっていうのは、ある意味目指してきたことだったのですごくありがたいと思っています。だって、そもそもお店なんて一人でやっても楽しくないですもん。

 

大事なお金のこと

新品ピカピカの厨房機器たちを前に

―開業資金はどうされたんでしょうか

金融公庫と見附市の助成金を利用しました。あとは自己資金と、それで賄えない部分については、親からも援助を受けました。自分がお金に対してあまり慣れていないので、融資は慎重に検討しました。
※最大500万円が受けられる見附市独自の起業支援制度についてはこちら

取材を終えて

起業に限らず、なにか新しいことをはじめるときには、ハードルがつきもの。
それは人との間、地域との間、身近な親との間など、無数に広がっていそうな気さえします。
終始、こちらからの質問にテンポよく、ロジカルにこたえていく宮島さんをみていると「すごいなぁ」と感じると同時に、ここまで話せるようになるまで、どれだけの悩める夜を過ごしたのだろう、と思いました。
実際、強い想いとは裏腹に、言葉にならず悔しい思いをしたことや、もっともらしいことが言えても「ほんとにそれがやりたいことなんだろうか」と自問自答する日もあったそうです。そんな悩める夜をいくつも超えた彼女がつくるパンは、多様なパンの魅力が軽やかに表現されつつも、とても味わい深いものに感じました。きっとどんどん変化していくであろうPictoのこれからが楽しみです。

オープン初日。見附の商店街には行列ができました。

Picto(ピクト)Boulangerie Sandwicherie

〒954-0057 見附市新町1-17-25
【電話】0258-86-8924
【営業時間】8時~18時
【定休日】水曜 

2018.05.09 Wed

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